ヨコシマ

これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音/双極性障害・パニック障害/20190602💍病気ながらも旦那さんが大好きな日記

我が家に屋敷しもべ妖精がやってきたこと

シマヨウコです。
先日の旦那さん寝起きの「さみしかったね」「おれのスピードが……」発言(詳しくは→https://w-border.hateblo.jp/entry/2019/06/26/073303)、起きてからすぐどんな夢だったのか尋ねたのですが、もう既に旦那さんの記憶からも完全に消えてしまった、本当に幻のような夢だったようです……。
こちらは「スピード……?!ワイルドスピードとかマッドマックスみたいな夢でも見たのか?!?!?」と内心ワクワクしながら妄想を膨らませていたというのに。
誠に遺憾です。

私は妄想が大好きです。
小さい頃から本が大好きないわゆる文学少女。小学生のときは福永令三先生の『クレヨン王国』シリーズをこよなく愛し、中学生になれば児童書だけでなく一般書にも手を出し時代小説にハマり、高校生時代は夏目漱石太宰治宮沢賢治夢野久作など近代文学に傾倒しました。
得意科目は国語と英語、好きな宿題は作文と読書感想文、暇なときには趣味のボードゲームの他、太宰治の『人間失格』が好きな友達と作中に出てくる『シノニム(同義語)アントニム(対義語)当てゲーム』などを嗜んだりするめちゃくちゃの文系女です。(これどれだけの人に通じるんだ?!)

とにもかくにも妄想が好きです。
まあその結果(?)がこの過剰すぎて若干生きづらい共感性のもとなのかなあとも思います。

この間、自分の父親より年上であろうほぼおじいちゃんの営業マンが我が家のドアを叩きました。日曜の昼下がり。ほんとならきっと可愛い盛りのお孫ちゃんなんかと遊んでいる、そんなときではないのか。開けて話を聞くと某置くだけ薬箱の営業さん。
「置くのにお金は要りません」「使ったぶんだけ、普通のお店よりお安く交換に来ます」
もちろん知っています。実家にもあります。だけども引っ越したばかりの私たち、一通りの常備薬はすでに揃えていました。
「一通りあるので……」
「置くだけでいいんです」「使わなければお金もかかりません」「近所の薬局で買うより安いですよ」
引かないおじいちゃん営業。
「実家にも、前住んでたところにも置いてたので仕組みは分かってます。でもいらないんです。本当に、いま一通りあるので」
するとおじいちゃん営業の様子が一変。

「お願いします。置くだけなんです」「ノルマがあって今日も日曜なのに回ってるんですよ」「今日は暑いですね。熱中症にになりそうなくらいです」「まだまだ回らないといけないんですよ」

まさかの同情買いの泣き落とし作戦。

こんなの普通の人だったら余計引いてお終いですよね。ただ、妄想力の高い私は勝手にさきほど妄想した、本当は今日遊びに来るはずだったかわいい孫と遊ぶおじいちゃん営業の姿を割と鮮明に脳内に描いていました。
父親より年上だろう年齢で、六月だというのにクソ暑い中歩き回り、自分の娘よりも若いだろう小娘にこんなに必死に頭を下げて……そんなに生活が困窮しているのかしらんとおじいちゃん営業の家庭に思いを馳せました。
うちの父は高校卒業からずっと今の会社に勤め続けた仕事人間。五十も半ばになると役職もつきますし、お給金もそれなりにあります。週休2日でも母親は結婚して30年、ほとんど専業主婦だし、私たち三きょうだいもお金のことで進路を諦めたりしたこともありません。仕事に関しては本当に立派な父親だと思います。
このおじいちゃん営業がどんな職務遍歴を歩んできたのかなんて知らないし流石に興味もありませんが、うちの父親を団塊の世代テンプレート人間だと認識している私にとって、そのおじいちゃん営業の必死さはあまりに哀れすぎました。こう言うと失礼かもしれませんが、もし申込書に『ご契約に至った理由はなんですか』という項目があったら迷わず『その他:営業さんがあまりにかわいそうだったから』と書いたと思います。

どうせ使うつもりもないので断っていた理由としては薬箱が嵩張るというくらいのものです。これでおじいちゃん営業が一時間でも早く家に帰って孫と遊べるのであればそれでいいではないか。幸い引っ越したばかりの我が家にはまだ置き場所を決めなくちゃいけないものがいくつかあります。それに薬箱一つ加わるだけで、おじいちゃん営業が、その奥さんが、お孫ちゃんが笑顔になるのならそれはとてもハッピーなのではないでしょうか。(※注:家族の存在は全て私の妄想です)

了承し、喜んでおじいちゃん営業が書類とうちに置く薬箱を用意する間に私は冷たいお茶を入れ、ついでに我が家では誰も食べない余り物の貰い物のお菓子を出しました。その日曜は確かにとても暑くて、おじいちゃん営業は本気で熱中症になりかねないと思ったからです。そんなの後味が悪すぎます。そんなことなど露知らず、おじいちゃん営業、しみじみ。

「ああ、おいしい。お優しい方ですねえ(目頭をわざとらしく抑えながら)」

いやだってあなたが熱中症がどうとか言うからあ〜〜〜〜〜!!!!!
段々おじいちゃん営業が『ハリーポッター』に出てくる屋敷しもべ妖精ドビー(これはある程度の人に通じると信じたい)に見えてきました。ああお優しいハリー・ポッター

おじいちゃん営業改めドビーが帰ったあと、じわじわと彼の可哀想さに涙が出てきてさめざめ泣いていてると、旦那さんは極めて冷静に「よくずっとそんなこと考えてられるね」と半ば感心していました。
ほんと、私もそう思う。
私がハリーポッター世界線にいて、ホグワーツ生だったらきっと一も二もなくハーマイオニーの主催するS.P.E.W(屋敷しもべ妖精福祉振興協会)の幹部会員とかになっていたと思います。

ホグワーツに思いを馳せながら、あのおじいちゃん営業があの手法で営業所トップのやり手とかだったらもう笑うしかないな……というしょうもない妄想でまだあのドビーのことを考えている私なのでした。



シマヨウコ